そして隣の部屋に行く。

リビングもゆったりくつろげるようにソファやクッションがある。

「本当に…変わらないんですね…ここは。」

明子さんは静かに言った。

「一度だけ…秀明を連れてここに来たことがあるんです。」

明子さんは語り始めた。

龍之介はソファに腰をおろす。

「秀明がどうしてももう一人のお父さんに会いたいと行ったので…私は彼の住所を何とか探しだして見つけたんです。

確か秀明が小学4年生の時でした…

秀の家を訪ねると、彼はとてもビックリしていましたが喜んで迎え入れてくれたんです。

『秀明、お父さんよ。』

秀明は不思議そうに秀を見つめました。

『お父さん…』

秀は秀明の前にしゃがみました。

『ごめんね、今まで寂しい思いをさせて。秀明…大きくなったんだね。』

彼は息子の頭を撫でながら優しく言いました。

『お父さん!』

秀明と秀は抱きあいました。

『明子、秀明をここまで育ててくれてありがとう。』

彼は私にお礼を言ったのです。

『そんな…当然よ…親として…ごめんなさい今まで…』

秀は泣き出す私を優しくなだめました。