私の旧姓は真田です。父は真田金融会社の社長です。

父のため…いえ、私は自分の世間体を一番先に考えていたんです。

『明子、僕のことなんて気にしなくてもいいんだ。怒られても構わないよ。いや、怒られて当然なんだよ、僕は。』

彼はそい言ってくれました。

『でも…こんな形だけど家族ができてとても嬉しいよ。』

彼の過去を知っている私は胸が痛みました。

でも私は自分のことだけしか考えられませんでした。

『秀、悪いけど結婚はできないわ。』

この時の秀の顔を今でも覚えています。

あんな悲しそうな顔…見たことありませんでした。

『でも生まれた子供に父親がいないなんて可哀想だよ。』

『いいわ、私がきちんと説明するから。』

それでも私は断りました。

『明子、僕は…』

『一人で産むからいいわよ!』

私は耐えきれずに叫び、その場を走り去りました。

私はそれからすぐ退学し、彼の元を去りました。

彼からは…電話がかかってきたり手紙が来たりしたのですが全て無視しました。

両親にこのことを話し…しぶしぶ納得してくれてそして一人で産みました。

それが秀明です。」

ここまで明子さんは話すと、下を向いた。