「申し訳ありません、お恥ずかしい限りです。」

長男はまた丁寧に俺にわびた。

「いえ、僕のせいで妹さんを不快にさせてしまってすみません。」

「いいえ、中谷さんは気になさらず続けてください。…龍之介、真面目にやるんだぞ。」
長男は龍之介に言った。

「俺にお叱りは?」

「今日はいい。では、失礼いたしました。」
長男は足早に去って行った。

俺と龍之介は椅子に座った。

俺も煙草を出して火をつけた。

「ごめん、豊。」

突然龍之介が言った。
「え?」

「さっきは悪かった。ついカッとして。」

龍之介は頭をポリポリかいた。

「俺が悪いんだよ。こんな荒らしみたいに探してるから。」

「それも職業のうちだし親父にちゃんと許可とってるから大丈夫だよ。」

龍之介はため息をつく。

「それより桜子さんは大丈夫かな?」

「心配ねえよ。あいつ近頃しょっちゅう俺たちにキレるから。」

「美鈴さんのことでか?」

「うん。半分ヒステリーみたいなもんだよ。最近すげえエスカレートし始めたからな。親父もお袋も病院行けって言ってるのにぜってー行かねえの一点張りだからな。」

龍之介は煙草を灰皿に入れた。