同棲ーーーそれは、結婚を考えるカップルにとって重要な期間だ。同じ屋根の下で暮らせば、その人の生活力や家での態度が自然と現れる。相手のマイナスな面が見えてしまうこともあるだろう。しかし、パートナーと一緒に協力し、愛や絆をさらに深めてくれる期間でもある。……うまくいっているカップルの場合は。

二十七歳、会社で事務員として働いている茅原結衣(ちはらゆい)は、残業帰りの重い体を引きずるように歩き、マンションへと帰っていた。その手には仕事用のかばんとスーパーで買い物をした袋があり、体がさらに重く感じる。

「ご飯作って、お風呂沸かして、洗濯物畳んだり掃除とか、してくれたらいいのに……」

マンションの部屋にすでに帰っているであろう恋人の顔を思い浮かべ、結衣はため息をつく。結衣は大学時代から付き合っている恋人と同棲中だ。だが、その生活はうまくいっているとは言えない。

「ただいま〜……」

結衣がドアを開けると、部屋の電気はついているのだが、「おかえり」という声は聞こえてこない。ただ、リビングからゲームの音だけが聞こえてくる。結衣はため息をついてしまった。