「じゃあそろそろ帰ろうかな、椎名さんはどうする?」

「あ…、わたしも帰ります」


病院のロビーで、七瀬さんが足を止めた。


「七瀬さん?」

「…椎名さんは橙樹のこと、どう思ってる?」

「どう…って」

「橙樹は好きなコの為に、煙草を辞めたって言ってた。
それから辞めるために、好きなコに煙草を預けたって…」


桜庭くんが吸ってた煙草は、確かにわたしが持ってる。
それじゃあ、桜庭くんの好きな人って……


「椎名さんは、持ってるんじゃないの?橙樹の煙草を」

「……、持ってます…けど」

「けどなに?橙樹のこと好きじゃないわけ?」


桜瀬さんがわたしの方をじっと見つめる。桜庭くんのことは、好き…だけど。