音のないこの世界で

「昨日と同じ物でごめんね」
また、僕に気を遣ったのか母はそう言った。
「いや、食べたかったから……」
これは本心だ。食べたかったけど、自分のプライドが許さなかった。
あの時素直に、「ありがとう」と一言だけでも、そう言えば良かったものを自分のプライドが邪魔をした。
「いただきます」
久しぶりのこんな豪華な食事を食べたこと、自分の情けなさ、母がいつも通り優しかったこと、色々重なって泣きそうになった。でも、頑張ってこらえて朝ごはんを食べた。食べ終えたところで母が、
「はい、これ。湊へのプレゼントよ」
そう言って渡してきたのは今、僕が使っているガラケーの進化したやつ。つまり、スマートフォンだった。あと、イヤホン。