思わず大きい声を出してしまった。その声にびっくりした成が、自分も思わず大きい声を出した。

「な、なんだよ!!」

「お、驚かせないでよ!!なにやってるのよ!」

「俺はスーパー寄ってきただけだよ。なんだ、今日は早かったじゃん。一緒に帰ろう」

「は、はい…すみません、大声出して」

「いいよいいよ。気にするな」


成は朝と同じく、ジャージ姿でエコバックを抱えていた。そんな格好でも、やはりどこか、か、か…格好いいと思う。これは元運動選手だったから?それとも…。

(佐藤くんに変なこと聞かれて、変に意識してるよ、私。…だめだ、しっかりしよう。雇用主が家政夫に手を出すなんて、想像したくない…エロ小説でもないし…)


「な、彩響。最近調子はどう?」

「え?なんの?」

「小説連載の方だよ。順調?」

「え?あ、そう言えば…」


成の言葉に、さっそくスマホを出し、自分が連載しているサイトを確認する。朝と比べクリック数が20くらい増えたことが分かった。まあ、こんなものだよね。彩響を見守っていた成が又聞いた。


「どう?読者数とか、ちょっと増えた?」

「そうだね…『お気に入り』設定してくれた人はちょっと増えたね。まだ二桁だけど」

「それが徐々に重なって大きい数になるんだよ。ほら、あの有名なユーチューバーも言ってたよ。『少ない量でも毎日載せるのが大事』って」


連載を始める前、成は自分からいろいろと市場調査をしてくれた。どのサイトが大きいのか、どのサイトがどんなイベントを開催しているか、とか。調べてくれた中で、彩響は一つのサイトを選んだ。


「ペンネームはなににするの?」

「そうだね…。こういうのって、みんなどう決めてるんだろう」

「住んでる地域の名前とか、自分の名前の漢字を並べ替えしたり、…人それぞれじゃないの?」

「…じゃあ、自分の名前でいいよ。表記くらいはローマ字にしようかな」

「本名にするの?」

「うん。過去の経験で書きたいから、名前も過去のままがいい」


彩響の話に成が頷いた。


「そうか、それもいい考えだな。ありのままの名前で、新しい世界を作り出す、うん。それでいいと思う。内容はどんな感じ?」

「え…それは、えーと、秘密」

「なんだよ、ちょっとくらい教えろよ。雇用主様」

「いいえ、お断りします」


成に見せるには、少し、いや…結構恥ずかしい。なぜならー