大掃除をしたからとはいえ、決して元の厳しい生活がすぐなんとかなるわけでもない。いつものように出勤した彩響は、急いで走ってくる佐藤くんを見て、またなにか事件が起きたことを確信した。佐藤くんが息を切らして言った。


「主任、大変です!」

「どうしたの?なんかあった?」

「こ、今回の雑誌についている付録の小冊子ですが…そこに大きい誤字、いや大きいミスがあり…」


佐藤くんの話に急いで問題のページを確認する。なんと、そこには誤字…いや、同じ文段が繰り返し二回載っていた。細かい誤字脱字でもなく、こんな大きいミスがあるとは…!

「しかも、よりによって『パチンコ』の『パ』がぬけてあったり…それが写メろられてSNSでバズっていて…」

もうそれ以上具体的な話は聞きたくなかった。彩響は急いで質問した。


「この小冊子の最終校正、誰がした?白谷くん?」

「そうです…」

「今すぐ呼んできて、早く!」


佐藤くんが急いで部屋を出たあと、次はパソコンの画面下からメール受信のポップアップが出た。確認すると、今回は別の部署の田中さんからだ。内容は以前彩響が渡したグラフの分析結果が間違っているとのこと。彩響は再びデータを確認するが、特に資料に問題は見つからなかった。


(もう、あっちこっちから騒がしいな…これ、結局自分がちゃんと数字見てないだけでしょう?!なんで真っ先に私のこと責めるのかな!)