「違うよ。あんたはきっと元はいい女だけど、いろいろと環境が辛いから疲れているだけだ。そろそろ細かい心配から開放されて、心に余裕を持ちたくないか?マジでトイレ掃除の効果抜群だぜ。大丈夫、最初の一歩は難しいだけで、一旦手を出せばなんとなくできるもんさ。せっかく俺の掃除に付き合うんだから、やれることはやっておこうぜ。次は絶対させないから」
こいつはヤンキーだけど、意外と人を口説くのが得意かもしれない。なんだかんだ文句を言ってみても、結局はこいつの言う通り流れて行く。彩響は悲壮な覚悟でトイレのドアを開けた。そこにある、白い便器、そして…。
「はあ…」
どうして自分は自分のお金を払って、自分でこんなことをしようとしているんだ?自分の行動が自分でも理解できない。しかしやつの言葉には妙な力があり、言われたことをそのままするようになる。彩響は長いため息をつき、結局端っこに置いてあったスポンジを手に取った。もちろん、素手で。
「…ここまでやってなにもおきなかったら、マジであいつ首にしてやる!」
こうして、彩響は人生初「素手トイレ掃除」を開催するのであった。
便器の掃除はなんとか終わった。最初中へ手を突っ込むときはかなりの抵抗があったが、いざ入れてみるとなんとか進んだ。おでこの汗を拭いて外へ出ると、成が「おつかれ」と歓迎してくれた。それを見た彩響はただため息をつく。
「どうして『お疲れ』というのが私ではないのか…」
「まあまあ、そう悲しく思うなよ」
「しかも特に気持ちの変化を感じませんが?」
「焦るなよ、そのうち効果を感じるようになるぜ」
「はあ…」
「さあ、次は洗面台だ!さっさと動く!」
「え?ええ…?!」
また手を引っ張られ、今度は洗面台の方へ向かった。成の指導の下、ゴシゴシと白い洗面台を洗う。今までずっと放置していた分、元の白さに戻すには結構力が必要だったが…お湯とゴシゴシの力で、気持ちの良いピカピカを取り戻せることができた。排水口の網まで変えると、成が満足した顔で言った。
「これでこの家に溜まっていた悪い運気は、ここから全部流れていく。玄関からはいい運気が流れてきて、悪い運気は消えるから、これからはきっといい運気だけが残るよ」
こいつはヤンキーだけど、意外と人を口説くのが得意かもしれない。なんだかんだ文句を言ってみても、結局はこいつの言う通り流れて行く。彩響は悲壮な覚悟でトイレのドアを開けた。そこにある、白い便器、そして…。
「はあ…」
どうして自分は自分のお金を払って、自分でこんなことをしようとしているんだ?自分の行動が自分でも理解できない。しかしやつの言葉には妙な力があり、言われたことをそのままするようになる。彩響は長いため息をつき、結局端っこに置いてあったスポンジを手に取った。もちろん、素手で。
「…ここまでやってなにもおきなかったら、マジであいつ首にしてやる!」
こうして、彩響は人生初「素手トイレ掃除」を開催するのであった。
便器の掃除はなんとか終わった。最初中へ手を突っ込むときはかなりの抵抗があったが、いざ入れてみるとなんとか進んだ。おでこの汗を拭いて外へ出ると、成が「おつかれ」と歓迎してくれた。それを見た彩響はただため息をつく。
「どうして『お疲れ』というのが私ではないのか…」
「まあまあ、そう悲しく思うなよ」
「しかも特に気持ちの変化を感じませんが?」
「焦るなよ、そのうち効果を感じるようになるぜ」
「はあ…」
「さあ、次は洗面台だ!さっさと動く!」
「え?ええ…?!」
また手を引っ張られ、今度は洗面台の方へ向かった。成の指導の下、ゴシゴシと白い洗面台を洗う。今までずっと放置していた分、元の白さに戻すには結構力が必要だったが…お湯とゴシゴシの力で、気持ちの良いピカピカを取り戻せることができた。排水口の網まで変えると、成が満足した顔で言った。
「これでこの家に溜まっていた悪い運気は、ここから全部流れていく。玄関からはいい運気が流れてきて、悪い運気は消えるから、これからはきっといい運気だけが残るよ」



