奥の部屋の中は真っ暗。
なんでも、ここの部屋は電気がないらしい。
昼間は太陽の明るい日差しがあって、夜は月明かりがベッドのそばにある大きな窓から入ってくるから。
そっと優しくベッドの上におろされて、音季くんと向かい合わせ。
目が合うのが恥ずかしくて、わずかに顎を引いて控えめに見つめると。
「……真白。おいで」
自分からは近づかないで、わたしが近づくのを腕を広げて待ってるだけ。
「早く抱きしめさせて」
ちょこっと距離を縮めると、月明かりの下で不満そうな音季くんの顔が映る。
「……そーじゃないでしょ」
「うっ……」
腕をつかんで、グイグイ引っ張ってくる。
でも、けっして音季くんからはきてくれない。
「早くして。真白がギュッてしてくれないと俺死ぬよ」
「そ、そんな大げさだよ……っ」
「大げさじゃないでしょ。だって、俺は真白の血がないと死ぬんだから」
それとこれとは、話が違うじゃんか……!

