スクリーンには美奈と由希奈が供養塔の前で、手を合わせている姿が映し出されていた。



「今回は如月君の出番は余りなかったですね」


「そうですね、あの子達が二人を救ったのですから」



館長さんはアールグレイをセレクトして如月に差し出した。



「世の中には様々な事がありますが、人の弱みに付け入る輩には気をつけなければいけませんね」


如月は頷いた。



「あの子供達は、何故幻想館に迷い込んでしまったのですか?」


如月の問いかけに館長さんは微笑んだ。



「さあ・・・でも私の入れたものを美味しそうに頂いてくれたので、それだけで満足ですよ」



優しい表情を見せているあなたと時折見せる厳しい表情。


本当のあなたは、どちらなのでしょうか

如月はそんなふうに感じた。



「ところでしばらく此処を留守にします」


「どこかへ旅立たれるのですか?」



「ひとところにいるのも飽きますから。
落ち着いたら連絡しますよ、如月君」



・・・と言うことは私もまた別の空間にでも行く事にしましょう。



「紅茶をご馳走さま。では館長さん、お元気で」



如月はお辞儀をしたあと闇の中に消えて行った。



そして館長さんが手を挙げると部屋が吸い込まれるように消えてなくなった。



残ったのは闇の空間に立っている館長さんだけだった。


「幻想館は本日を持ちまして、しばらくの間、閉館させて頂きます」



そして彼もまた、深い闇の中へ・・・。