王子が帰宅したのは次の日の、お昼頃だった。
酷く疲れた様子で帰って来た王子は、エルミアに軽く挨拶したのち、すぐに自分の寝室へと籠った。
グウェンのみ入室を許可され、体に優しい食べ物や水が頻繁に部屋に運ばれていくのを何度か目撃した。
「王子、大丈夫かな?」
図書室塔にリーシャ、サーシャ、ナターシャを連れてエルミアは、太古の森について調べものをしに来ていた。
いつもように絨毯の上で、あぐらをかき、その上にクッションを乗せ、本を見やすくする。
「王が不在になってから、体調を崩すことが多くなりました」
調べていた本から顔をあげて、リーシャが言った。
「夜も、ほとんど寝られない様子で…」
「ここ最近です。顔色が良くなってきたのは」
サーシャが、いくつかの本を抱えながら、エルミアの隣に座った。
「王子が眠れるように、私たちも色々試したのですが…」
「何も効かなかったの」
近くの本を手に取り、ナターシャが続けて言った。
「そうなんだ…」
自分といる時は、爆睡している王子しか見たことなかったエルミアは、いつも相当疲れているんだろうと思った。
「あ、あった!」
サーシャが持ってきた本に目当ての個所を見つけて、ナターシャが声を上げた。
「太古の森には、鴉の社があり…。これ、ドワーフが言ってたのと同じ情報だ」
「意外と載っているものなのね。太古の森に関しては…」
文字が読めないので、地図のイラストを見ながらエルミアは言った。
「鴉の社は、神聖な場所でずっと昔から存在している。
昔のエルフたちは、何か困ったことがあると、お参りに行き、助けてもらっていたという逸話もある。
しかし森にかけられた強力な呪文により、純粋な心を持つ者しか、その社に到達することが出来ない。
それ以外の生き物は、一度入ったら生涯一生その森を彷徨うことになる」

