蒼月の約束


突然のエルミアの登場に、その場にいた全員が一瞬、不意を突かれたように息を飲んだ。

しかし、すぐさま我に返ったドワーフは、エルミアに向かって低い声でうなるように聞いた。

「お前が、歌を歌ったというのか」

「は、はい…」

王子が額に手を当てて、ため息を吐いた。

「…全く」



「どんな魔法を使った!?」

ドワーフが、エルミアに詰め寄る。

「一体、どんな魔法だ!?」

「ま、魔法なんて使ってません!」

自分の背丈の半分ほどしかないドワーフが、こんなにも恐怖に感じるとは思いもよらなかった。

「わ、私は、魔法なんて使えません…」

「どんな歌をうたった?」

ドワーフは、もう一歩エルミアに詰め寄った。

「…え?」

エルミアはドワーフを見た。

「なんの歌を歌ったかと、聞いている!」

「は、ハミガキの歌です!」

あまりの威圧的な態度に思わず、口をついて言葉が出た。


謁見の間がしんとするのが分かった。

ドワーフはきっと理解に苦しんでいるに違いない。