「精霊の書の情報って全くないの?」

声を落としながら、隣に歩いているサーシャに尋ねる。

リーシャは先頭を歩き、誰か聞き耳を立てていないか、警戒している。


「本来であれば私どもの耳には全く入ってこない類のものです」とサーシャ。

「代々、予言を受け取る家系があると言われております。
四大精霊と強いつながりのある4つの家系のみが、その精霊たちから直々に言葉を受け取ることが出来ると言われています。
そのため、予言が出たことにさえ気づかない者は大勢います」


リーシャは前を見つめながら言った。

あまり変わらない様子に見せてはいるものの、さっきエルミアを呼びに来てからというものの何か不自然にも見える。


「リーシャ、やっぱり何かあったんでしょ?」

エルミアは先ほどから自分と目を合わせないリーシャに向かって言った。

「私、何かしちゃった?」

それなら謝る、ごめん。
と呟くと慌てたようにリーシャは、首を振った。

「ち、違います!少し気になることがあって…」

「気になることって?」

今やエルミアだけでなく、興味津々の目をしたサーシャとナターシャがリーシャを見つめている。

「どうしたの?」

ナターシャが目をキラキラさせている。

「私が勝手に懸念していることなのですが…」

リーシャが三人の威圧的な視線に耐えられなくなり、口を開いた。