「で、でもさ。私がただ夢で見ただけだし…。これが何かの予言って訳じゃ…」

「予言にはこう書かれてあった」

王子が真っすぐエルミアを見つめた。
今度はなぜか王子の瞳から目が離せない。

「奇怪な服を着、奇怪な言葉を話す者が訪れた時、新たな時代が始まるだろう。
世界が一つになり、全ての願いは叶えられる。
眠りについた者は、目を覚まし、目を覚ました者は、更なる力を付けるだろう。と」

「それが、私…?」

全員の視線が、エルミアに集中し、なんだか居心地の悪さを感じた。

「いや、でも、私は…」

私は何も知らない。
何もできないという言葉は、王子の言葉によってかき消された。

「とにかく、精霊の書について情報を集めよう。
誰よりも先に精霊の書を見つけ、女王が四大精霊を呼び出すのを阻止せねば。
ミア、他に何か覚えていることはないか?」


エルミアは、あの時のことを思い出そうとした。
しかし、鮮明に覚えているのは隣で静かに眠っていた、天使のような美しさの体を持つ王子だけだ。


思わず赤面した顔を隠すように、エルミアは膝に置いていたクッションを見つめながら言った。

「…特には」

ふうとため息を吐いて、王子は立ち上がった。

「各々、精霊の書について情報を集めるように。いいか、絶対に他に漏らしてはならない」

王子が立ち上がるより先に、さっと起立した四人は、「はい!」と声を揃えて頭を下げた。


エルミアは未だ座ったまま、考え込んでいた。


なんだろう…。

何か、思い出せそうな気がする…。


「ミアさま?」


サーシャがエルミアの顔を覗き込んだ。


「え?ううん。何でもない」


王子が図書室を出て行ったあとに続くように、四人は外へと出た。