女王の配下だったときのような、自分を強くみせるような攻撃的な雰囲気は全くなくなっていた。
やっと子供らしいレ―ヴに出会えた気がした。
朱音はレ―ヴに駆け寄り、思いっきり抱きしめた。
「良かった。お姉さん戻ってきて」
「うん、ありがとう」
朱音の肩に顔をうずめてレ―ヴは涙声で言った。
「本当にありがとう。命がけで、約束を果たしてくれて」
それから朱音は涙ぐんで立っているエルフに声をかけた。
「おかえりなさい」
きっとレ―ヴのお姉さんも怖い思いをしていたに違いない。
女王に生贄として連れていかれたのだから。
「今は何をしているの?」
レ―ヴから離れ、朱音は聞いた。
「僕たちは旅人なんだ。各地を旅しながら困っている人たちを助けてる」
それから悲しそうに少し目を伏せた。
「思い出したのは最近だけど、僕は自分がやったことの償いが出来ればなって思ってる。
ずっと記憶のない罪悪感に苛まれてたけど、やっと理由が分かった。みんなにしてきた仕打ち。
でも前を向いて行こうと思う。僕には家族がいるから」
「うん」
女王の配下として多くの悪いことをしていたかもしれない。
でも亜里沙を助けてくれたことは事実だ。
レ―ヴもまた子供に戻って幸せになるべきだ。
思わず自分より背の高い子供をまた抱きしめてしまう。
「今度こそ幸せになるんだよ」
「ありがとう…」
いつの間にか隣に来ていた王子が朱音をレ―ヴから引き離す。
「そろそろ解放してやれ」
帰り際、レ―ヴが言った。
「本当に感謝してる。エルミアちゃん」
「アカネだ」
王子が訂正した。
「アカネね。いい名前じゃん。エルミアより似合ってる」
生意気な言葉を残し、仲良さげに姉弟は帰って行った。