宮殿内は前よりも明るく活気があった。
エルフの数も一段と増えている。
封印が解けたことが喜ばしい半面、注目度も倍増し、恥ずかしい。
手で顔を覆い、なんとか耐える。
王子が足を止め、部屋に着いたのが分かった。
「本当は今すぐにでも、王と妃にアカネを紹介したいんだが、あいにく今は二人とも不在でな」
そう言いながら朱音をソファーの近くに下ろし、グウェンの方を向く。
「グウェン、あの三人を」
「すでに呼んでおります」
そうお辞儀したグウェンの後ろから小さな悲鳴が聞こえた。
「み…ミアさまあああああ!」
サーシャとナターシャが大泣きしながら入ってきた。
朱音も懐かしい顔に再会し、嬉しさで目頭が熱くなる。
「サーシャ、ナターシャ…!」
二人を抱きしめ、その後ろにきりっと立っているひと際目立った短髪のエルフも手招きする。
「リーシャ…会いたかった」
四人が感動の再会を喜んでいる様子を満足げに見ていた王子は、着替えて来ると部屋を出て行った。
一通りうれし泣きをしたあと、三人は鼻をぐずぐずさせながら、今までのように朱音の着替えを用意し始めた。
「ずっと寂しかったんです」
サーシャが服を着せながら言った。
「記憶が丸きり消えていたので、なぜこんなにも悲しいのか分からなかったですが」
「そしたらさっきいきなり思い出したの」
ナターシャが朱音に抱き着いた。
「私たちはミアさまを忘れていたんですね」
涙を拭いながらリーシャが言った。
そして朱音の着替えが終わると、三人は一斉に膝をついた。
「え、何…」
いきなりのことに慌てる朱音。
「ミアさま。私どもの国を救って頂き感謝しております」
朱音はふっと笑った。
「うん、本当よかった」
明るくなった宮殿内。
今や楽しげな話声や笑い声も聞こえてくる。
見間違えるほどの変化だ。
いや、変わったんじゃない。本来の姿に戻ったんだ。

