「…おい!」
大声を出されてハッと我に返った。
男はいきなり黙り込んだ少女を訝し気に見ている。
「家族は…」
そこまで言って目頭が熱くなった。
今、どうしているだろう。
私の方が知りたい。
少女の言葉の先を感じ取ったのか、男は乱暴に少女の頭を撫でると欠けた前歯を見せて笑った。
「よし、今日からお前は俺の妹だ!俺の名前はダヨン。お前は?」
少女は目をしばたかせながら答えた。
「…ヘルガ」
「よろしくな!」
そう言ってまた頭を乱暴に撫でる。
この男を信用していいものだろうか。
そんな疑いは微塵も頭をよぎらなかった。
ただただ、何もかもが温かった。