「これか?」

女王は、玉座の横に置いてある、黄金の羽根、虹色の鱗、そして古代花を指さした。

朱音は目を見開いた。

「私を見くびっては困る。忠実な部下がいるのだからな」

レ―ヴだ。
レ―ヴ以外にいない。

一体いつ、いつ盗み出したのだろう…

鼓動が早くなる。

何度も王宮にこっそりやってきたレ―ヴは、いつでも機会があった。

私が、みんなに黙っていたせいで…!

「まあ、そう気を落とすな。お前たちの努力は無駄にはしない」

「し、四大精霊の召喚方法は知っているの…?」

朱音は顔を上げて聞いた。

王子たちとは召喚方法まではたどり着けなかった。

もしかすると、女王のところにアイテムがあるのは、ある意味ラッキーなのかもしれない。

女王は頷き、嬉しそうに目を細めて言った。

「さて、本題に入ろう」

女王は、コツコツと足音を響かせながら朱音に近づく。

「精霊の塔はもう完成間近だ。お前の役目は、精霊を呼び出し、召喚した四大精霊に私の願いを伝えることだ。簡単だろう?」

その場で身動きが取れず強張った朱音の顔を嬉しそうに眺める。

「わ、私に、精霊の召喚なんて…」

女王が近くに来ただけで体が緊張し、鼓動が早くなる。

まるで、全身がここから逃げろと危険信号を発しているかのようだ。

「そう謙遜するな。お前以外に精霊と会話できる者はいない。唯一エルミアと同じ能力を持っているのだからな」

そして女王は、ぞっとする笑い声をあげた。

「エルミア。エルフの歌姫、エルミア!」

「何を言って…」

体は硬直して動かず、汗だけが滴り落ちる。

「不思議な縁だな。あの王子の最愛の歌姫と同じ能力を持っているとは」

脈がまた一つ大きく鳴った。

朱音が動揺したのが見えたのか、女王は口角を上げた。

「知らなかったのか?私が封印した、エルフの歌姫は、王子の愛してやまない婚約者であったと」

「ふ、封印…」

朱音は拳が震えるのが分かった。

恐れなのか、悲しみなのか、怒りなのか、いろんな感情が体内で渦巻いている。

「まあ、無理もないか」

女王は新しいおもちゃを見つけたかのように無邪気に話し続ける。

「あの娘を覚えているものは、私以外いないからな」

「なぜ…」

力を振り絞ってそれだけ、言葉が出て来た。

女王はくくと笑った。