突然声がした。

辺りを見渡すが、巨大な鳥の登場に驚いているリーシャ達だけで、他には誰もいない。

「なんだ、気のせ…」

〈気のせいではない〉

エルミアの心を読んで、また声がした。

「一体、なに…」

そこまで言いかけて、リーシャが素早い動きでエルミアの近くに寄った。

「この者が、〈月の廻りを知る者〉です」

「ええ?」

どう見ても巨大なフクロウにしか見えない鳥を、じっと見つめる。

「あんなに苦労して探したのに」

悔しそうな声を出しながらナターシャとサーシャもエルミアの近くに来た。

「向うから来ることは、絶対ないんですよ」

今もなお自分の毛づくろいをしている鳥を見つめながらリーシャが言った。

「月の廻りを知る者って勝手に人型だと思ってたけど…」

〈お前が、予言の娘だな〉

「頭の中で話かけてくる、この鳥ってこと?」

エルミアが指をさしながら言うと、その言葉に憤慨したように脳内で声が響いた。

〈ローワンだと言っているだろう。まったく無礼な娘だ〉

「ミアさま、声が聞こえるのですか?」

驚いた顔をしてサーシャが聞いた。

「え、みんなも聞こえるでしょ?この偉そうな態度の…」

〈無礼な、偉そうではない。エライのだ!〉

エルミアの脳内では喝を入れているのに、当の本人は、本物の鳥らしく全く別の方向を向いている。

「ミアさま、〈月の廻りを知る者〉の声を聞いたものは、今までにおりません…」

リーシャが探るような目でエルミアを見つめた。

「え、だって…声が」

〈私の声は、お主にしか聞こえぬ〉

「だって、ナターシャが暗唱したのは…?」

脳内の声を無視して、頭を抱えながらエルミアは聞いた。

「あれは、指示された場所に…」

ナターシャが説明しようとしているのに、そんなことはお構いなしに鳥は話し続ける。

〈私が直接言ったのではなく、それを書いてある在処を教えてやっただけじゃ〉

同時に話すのでエルミアは、憔悴していた。

「お願いだから、話すのはどっちか一人にして…」