「竜宮城へは、「竜宮の使い」と呼ばれる生き物に乗っていくようです。
彼なら潮の動きを完璧に読むことが出来ます。
なんせ、この先は魔の海域と呼ばれるほど、いったん潮に捕まったら、逃れられませんから」


青年コロボックルは、トックという。

青い民族衣装に身を包んだ、正義感が強く誰にでも優しそうなタイプだ。


トックは一行を、反対側の海岸へと案内しながら話していた。

自分がお役に立てるなら、と喜々として竜宮城への行き方を説明してくれいる。


「竜宮の使い…。絶対、カメだ」

話を聞きながらエルミアは心躍らせていた。


昔読んだ童話が頭の中で蘇る。

助けたカメはいないが、竜宮城へ連れて行く役目を担うのは、カメ以外には考えられない。


「しかし、水中で呼吸は出来ないですが…」

一番の問題を提起したのは、リーシャだった。


竜宮城というメルヘンな世界に浸かっていたエルミアは、そこで現実に引き戻された。

「確かに」

「その問題には及びません」

一生懸命歩きながらトックは胸を張った。

「水中でもしばらくは息が出来る植物を頂きました」

しばらく歩いたのち、一行が着いたのは、先ほどの海岸とは似ても似つかないほど荒れた場所だった。