「歌を歌っていたのは、お前かの?」
足元にいる推定30センチ程の小人が、フキの葉から顔を出して聞いた。
白いひげがはえている辺りを見ると、コロボックルの中でも長老の方だ。
「はい…」
かがんだ方がいいのか、分からず、そのままエルミアは頷いた。
近くて見ると確かに小さいサイズで可愛らしいのだが、年齢がいっているせいか、「かわいい」とは口に出しづらい。
長老らしき人物の後ろには、他に二人の男コロボックルが付き添っているが、彼らもカワイイと言える相手ではなさそうだ。
「まさか、予言の娘か?」
「その通りだ」
王子が代わりに答えた。
「私たちは、精霊の書を解読し、ここまで来た。何か知っていることはないか?」
長老は「ふむ」と長いひげを触ったあと、顔を王子に向けた。
「申し訳ないが、わしらの予言の受け取り手はここにはいない。手助けは出来なさそうじゃ」
「どういうことだ?」
王子が膝を付き、話を聞きやすくする。
「精霊の書の話は聞いたことがある。精霊の呼び出し方法かなんかじゃろ?しかし、わしらの村にいたレシーバーは、ずいぶん前に西の女王に連れて行かれたきり戻っては来ておらん」