不思議なことに、エルミアの脳内で微かに流れていた音楽は、歌えば歌うほどまるで耳元で音楽を聴いているのかのように音が大きくなる。

歌えば歌うほど、気分も高まり、どんどん楽しくなってくる。


エルミアは、驚いているリーシャたちそっちのけで、歌をうたいながら、水を蹴飛ばし、笑っていた。


「それは、なんて言う歌なの?」

エルミアの隣まで走って来たナターシャが無邪気に聞いた。

「んとね、花火の歌」

まだ鼻歌を続けながら、エルミアは楽しそうに答えた。

「海と言えば、夏でしょ?夏と言えば、花火だよね」

「はなび、とは?」

ナターシャとは別の隣に来たサーシャが、今度は聞いた。

「空に咲く火花、かな」

自分の返答に満足しながら、エルミアは歌い続けた。

「花火のうたは、私の世界にはたくさんあるの」


その時、王子の呼ぶ声が聞こえた。

「ミア!」

振り返ると、手招きしている王子とグウェンの足元にいくつかのフキの葉が並んでいる。

「あら、コロボックルですね」

「恥ずかしがりで、中々会えないって言ってなかったっけ?」

王子の方へ歩いて行きながら、エルミアは首を傾げた。

「そのはずなんですが…」

エルフ三人も不思議に思っているようだ。