「さっき、誰かと話してました?」

いつもの図書館へ行く道中、サーシャが聞いた。

エルミアはぎくっとして表情が固まったが、サーシャは前を歩いていたため、それが見られることはなかった。

「ど、どうして?」

「声が、複数聞こえた気がしたもので…」

「私、一人だったよ」


ああ、人生初の嘘をついてしまった…。

エルミアは唇を噛みしめた。


人に言うなとは言われていないのに、ここの宮殿にいるエルフに敵意を持っている彼のことを話してはいけないと、心のどこかで思ってしまったのだ。


「う、嘘も方便って言うし…」

蚊の鳴くような小さい声で、エルミアは呟いた。

「何かおっしゃいました?」

サーシャが振り返った。

「ううん。何か分かったことあった?」

「はい。ミアさまの仰った通り、プラネット・オーシャンの近くにフキ畑が存在するようです」

そこで二人は、図書館に着いた。

「ミアさま」

いち早く到着に気がついたリーシャは、床に広げていた地図から顔を上げた。

「見つけましたよ、フキ畑。ここから、ずっと南に下ったところです」

「それ以外に何かヒントはあった?」

絨毯の上に山積みになっている本をよけ、自分の座る場所を確保しながらエルミアは聞いた。

「はい。そのフキ畑には」

そう言って、本を開いてエルミアに見せる。

「コロボックルという妖精たちが住んでいます」