Moonlight memory【短篇】




 宙に連れ去られた彼女は寂しくないだろうか?

 虚空の闇に消えた魂は思えば思うほどに、まるで月のように孤独に思えて……

 願わくば、せめて捜し求めた半身と出会い共にいることを。

 少しでも孤独ではないようにと……願わずにいられない。






「パパ?」

 抱きすくめられて胸元に顔をうずめた娘が、小さな手で背中を撫でる。

「ないてるの? ぱぱ? だいじょうぶ?」

 震える背中に気付いたのか……

「パパ? だいじょうぶ? だいじょうぶだよ……ユーリがずっとそばにいるからね」

 理由はわからないだろうに、懸命に慰めようと背中を撫でつづける手が愛しくて。

 その言葉が永遠ならばどんなにいいだろうと思いながら……






 嗚咽を噛み殺し、ただただ抱きしめる。





 月が彼女を連れ去らないように。

 このささやかな幸せが消えてしまわないように。






 その光がユーリを見つけてしまわないように……