「いえ、すみませんこちらこそ……娘の子守りさせてしまって」

 言いながらその巨体の奥を覗くと、彼に積み木の相手をさせていた張本人がぱあっと笑顔を顔中に広げて

「パパ、もうおわった?」

 その小さな体にはやや高い椅子から、臆することなく飛び降りて駆け寄ってくる。

 ボスッと音をたてて、飛び込んできた体を受け止め

「待たせてごめんな、ユーリ。もう終わったから帰ろうな?」

 愛くるしい額にキスを落として、柔らかな長い髪を撫でた。

「ガスを排出するバルブが痛んだせいで調子が悪かったみたいです。応急処置はしておきましたけど、早めに部品を替えた方がいいかもしれません」

「そうか……いや、でも助かった。あんなおんぼろトラックでも大事な商売道具だからな。車は詳しくないから、お前さんみたいに機械に強い奴がいると助かるよ」

 立ち上がった俺たち二人を見送りについてきたドルチェと歩きながら会話を交わす。

「しかし、なんでまた宇宙ステーションで技師をしてたようなエリートさんがこんな田舎になあ……」

 ユーリを抱えて車の座席に降ろしたところで、ドルチェが不思議そうにそう訊ねる。