【コミカライズ化!7月28日配信!】5時からヒロイン

「水越さん、何がお目当てです?」
「そうねえ……あれかな?」

私は、顎を上に向けおめあての方向を教える。

「シュラスコ?」
「そうよ」

ローストビーフはないけど、シュラスコがある。肉の種類は違うけど、肉の塊と言う所は一緒だから、狙うはシュラスコ。クルクルと回って焼き上げられている肉が、食欲をそそる。
お寿司に定番のたこ焼きや、お好み焼きまであって、どれもおいしそうで全部食べたい。

「でも、食事をしている時間はあるのでしょうか?」
「確かにそうね……」

ホストの役目があるのに、自分たちが楽しんでばかりいられないだろう。

「そうだ、部長に料理をお願いしておけばいいんじゃない? 食いしん坊だから頑張ってくれるわよ」
「確かに! 部長にお願いしておきますね」
「お願い」

昔はスリムでハンサムだったという部長は、リストまで作って食事を楽しみにしている。自分ばかり楽しんで部下は仕事なんて許せない。食事の確保くらいしてもいいだろう。

「さて、ゲストがいらっしゃるまで、通常業務につきましょう」
「はい」

ゲスト用の控室と園遊会の席は準備も整っている。この日の為に、どれだけ大変な思いをして準備をしてきたか。園遊会が終わったらまとめて休みを取って、どこかに行こうと計画をしている。そのうちの一日でもいいから、社長とどこかに行ければいい。
社長室前のデスクに戻って、園遊会のしおりとゲストの予定を確認して、スマホにスケジュールを入れる。時間通りに進めるために、アラームを予定毎に設定する。
ゲストがいる時でも、社長の時間は定刻通りに運ぶのが常だ。それを知らせるのは私の役目。

「失礼します」
「ん」
「会場の確認を終え、控室と会場のお席の準備も終了いたしました」
「……分かった」

ん? なんだか様子がおかしい。私の目を見ようとせずパソコンの画面を見たままだ。それに、返事も遅いし覇気がない。

「お疲れですか? お茶でもお淹れいたしますか?」
「ん? あ、いや、いい」
「畏まりました。何かございましたらお声掛けを。ゲストに関しての連絡は常に入るようになっておりますので、その都度お伝えいたします」
「分かった」

付き合う前の他人行儀な感じ。どうしたのだろう。朝は普通だと思ったんだけど、おかしい。聞きたいけど、なんだか恋人に戻って聞いてはいけないような雰囲気だ。

「何かあったのかしら……」

久し振りに感じる棘のある感じと、近づけさせないような雰囲気で気になるし、心配だ。
でもその答えはすぐに分かった。