【コミカライズ化!7月28日配信!】5時からヒロイン

「すんなり帰れるのね」

パーティー会場であるホテルを出ると連絡が入る。私が待っているから、社長は取り巻きをうまくかわしたのだろう。

「私も着替えをしなくちゃ」

プレゼントされたあの黒のワンピース。一度切りなんてもったいなくて、どこかで着るチャンスはないかと思っていた。社長がパーティーの愚痴を言ったときに思いついたことで、いつも癒してもらっている私ができるお返しだ。

「少しは癒しになるかな?」

何もしてあげられていないと感じていたから、喜んでもらえるといい。
社長の家にある私専用のクローゼットから、ワンピースを出して着る。デートの時と違ってヘアはブローをしただけだけど、念入りにブローしたから本当に綺麗になった。いつもまとめ髪だからブローはおざなりにしていたけど、これからはちゃんとしよう。

「やっぱりかわいい」

ワンピースは二度目の着用だけど、本当にかわいくて、バービー人形といってもいい。

「自画自賛」

鏡の前でふざけていると、ベルが鳴った。

「社長だ!」

急いでインターフォンで対応して、ドアを解除する。
玄関でいそいそとしながら待っていると、またベルが鳴った。

「は~い」

重厚なドアを開けると、そこには私の男がタキシードを着て待っていた。

「おかえりなさい」

なんだか久し振りに会うような気がして、抱きつく。

「ただいま」
「開けて入ってくるかと思いました」
「鍵は沙耶に渡してしまっただろう?」
「あ、そうでした」

玄関に入るそうそう、お帰りとお疲れ様のキスをする。

「どうした? その服」
「ふふ……」

含み笑いをして社長の手を引く。不思議そうな顔をしながらも、私に手を引かれてリビングに入る。

「ジャジャーン!」
「どうしたんだ?」
「パーティーは緊張もしているだろうし、お酒も味わえなかったんじゃないかと思って、私からの労いです」
「豪華だな、うれしいよ」
「デパ地下製品ですが」
「わかってる」

料理が出来ないことは既に社長も知っているから、隠すこともない。社長は満面の笑みでテーブルを見た。

「ローストビーフもあるんだな」
「ええ、大好きですから。寝言を言うくらいに」
「嘘じゃない、本当に言ったんだぞ?」
「分かってますぅ」

ワインの栓を抜いて、グラスに注ぐ。

「お疲れさまでした」
「お疲れ」

乾杯をして同時にグラスに口を付けると、社長は私の腰を引き寄せた。
嬉しいけど、突然で目をぱちくりした私にキスをする。

「……ん」

社長から私へワインが注がれる。口移しなんて初めての経験だけど、すんなりと出来る社長はやり手とみた。

「今日もきれいだ」
「社長もすてきです」

もう一度熱いキスを交わして、二人でソファに座る。キャンドルの灯りが瞳に反映されて、社長がますます素敵に写る。
見つめ合いながらゆったりとした時間が過ぎてゆく。忙しすぎる私達にとって、ゆっくりできる時間が取れるなんて、贅沢なことなのだ。
食べさせあいっこをしている、社長のこんな姿を社員が見たら、固まってしまうに違いない。

「このサプライズのためにこれを?」

ドレスアップした私を、まじまじと見る。

「だって一度しか着ないなんて、もったいないじゃないですか」
「嬉しいサプライズだ」
「疲れも飛びました?」
「ああ、吹き飛んだよ」
「パーティーはいかがでした?」
「ご婦人方が相変わらず強くて、強烈だったよ」
「可哀そう……」
「まあ、経営者の妻はそのくらいじゃないと、やってはいけない部分もあるからな」
「そうなんですか?」
「いつ何時、何があっても動じない強さが必要だ。経営者があたふたしていたら、社員はどうなる? 弱みを見せないことが重要だ」