「そうそれ! それ! そんなの映画のなかだけだって思ってたけど、本当に跳ねたの! びっくりでしょう? こうやって、こう、こうよ」

立ち上がってその足を再現した。
大きく頷いて、弥生が言う。

「ねえ、沙耶」
「ん? なあに?」
「話をしすぎて声がしゃがれてるわよ」
「え!? ほんと?」

ほらと言って、お茶を飲まされた。
テーブルの上には、空いた肉の皿が積み重なって、女三人で食べたとは言えない量だ。ほとんどマコだけど、感心するほどよく食べる。食べ放題にして良かった。
私は話しに夢中で時々、弥生が口に運んでくれる肉を食べるばかり。恋で胸がいっぱいの私は、お腹も空かない。

「これからどうなるか分からないけど、羨ましい。私もクルーザーに乗りたいなあ」

マコが食べる箸を止めずに羨ましそうに言った。

「私だって乗りたいわよ」

辛口女子の弥生も言った。やっぱりみんなこういうことをして貰いたいのだ。

「お弁当も作ってもらった」
「え!? 料理まで出来るの?」
「そうなの、それもプロ並み」
「いいじゃない、沙耶は何も出来ないんだから」

驚いたマコとは別に、やっぱり弥生は辛口。

「いいじゃない、出来なくたって」
「そうよね、もし、結婚したとしても家政婦さんを雇えるもんね」

なによ、「もし」って。

「羨ましい反面、沙耶のことが心配」
「どうして?」
「社長と秘書だよ? 社内恋愛が禁止されてないからとはいっても、オープンに出来ない関係は、長続きしないような気がしてならない」

弥生は、辛口だけどいつも心配してくれる。

「それは私も感じてる」

私だけじゃなく、弥生やマコも同じことを思っているんだ。社長の妻にはなれないって。

「付き合っているのを周りに知られないようにするなら、徹底しないと沙耶に傷がつくよ? 想いが叶って本当に良かったと思うけど、悲しみしか残らない恋愛は、沙耶には向かない」
「ありがとう、心配してくれて」

恋に恋して熱を上げてしまっている私を、冷静にさせてくれるのはやっぱり友達。