「ねえ、水越さん。新しい占い見ます?」

三井さんはどうやら占いが好きみたいで、前にトイレで見せてもらったのも三井さんだった。占い特集の雑誌を買ったと言って持って来た。まだ昼休憩にもなっていないが、いいのだろうか。

「もういいわよ、今の私には、厄払いの方法が載ってる雑誌の方がありがたいわ」

どうせろくなことは書いてない。トラブルの連続で、占いどころじゃない。

「パワースポットの特集もありますよ?」
「どれどれ」

単純な私は、身を乗り出していた。すでに神頼みの域に達している。そう大きくないソファに、私と三井さん、長嶋さんまで座って狭いったらありゃしない。私が雑誌を広げて、横で二人が見る。

「縁切りに縁結びか」
「金運もあります」

金運は七福神を巡る順番が書かれていて、なかなか興味深い。今の私は縁結びがいいけど、そんなもので社長を引き寄せられるなら、いくらでも祈願しちゃう。

「そういえば、占い当たってたじゃないですか、怪我に注意って書いてありましたよね?」

そう言ったのは、長嶋さん。

「確かに~」

長嶋さんまで覚えていたのか、なっとくの頷きをする。
私もしっかりと記憶している。恋愛は下降気味、怪我に注意。

「当たってただけに何も言えないわ」
「だから、今回も読みましょうよ」
「どれどれ、読んでみて」

うまく乗せられ、自分の星座でもある、おとめ座の運勢を読んでもらう。

「全体運は、衝動的に言ってしまったことを、後悔することがありそうです。発言には気を付けましょう。解決しない問題を抱え、モヤモヤが増すばかりです。この時期のおとめ座は大人しくして星が動くのを待ちましょう。健康状態も引き続き注意が必要です。次に来る運気の為に、休養と食事に気を付け英気を養っておくことが大切です。ですって」
「それ、いつ発売したの?」
「えっと……」

雑誌の表紙の発売日を、三井さんが確認した。

「昨日、買ったんですけど、発売日は先週ですね」

昨日、教えてよ。また占い通りに人生が運んでしまっているじゃない。占いによると大人しくしていた方がいいということだけど、転職はどうしよう。

「ねえ、恋愛運と仕事運はなんて書いてあるの?」
「恋の駆け引きがうまく行きそうで す。意中の人には何か仕掛けてみるのもいいですね。仕事運はこれからの進む道を見極める時期に入っています。腰を据えてこれからを考えましょう。です」
「う~ん」
「当たってます?」
「当たっているようないないような」

ほとんど当たっている。ひょっとして、この占い師は弥生か? こっそり副業でも始めたんじゃないだろうか。
「どうぞ読んでください」と三井さんが私に雑誌を貸してくれて、それぞれの仕事に行った。