【コミカライズ化!7月28日配信!】5時からヒロイン

弥生は何かと気にかけてくれて、何度か様子を聞いてきていたが、全く変化がないまま、日々だけが過ぎていった。
変わらずの激務で、あの時の事を考えることは少なくなったが、今度は苛立ちが占める割合が多くなっていた。
何も聞いてこない、言ってもこない社長に、男らしくないと怒っていた。私のうぬぼれかもしれないけれど、視線を感じたり、私に対して接触が多くなった気がする。でもそんなことを深く考える暇もないほど、仕事に追われていた。
記念の贈り物、お祝い、海外の取引先との食事会に渡す手土産など、怒涛の如く押し寄せている。

「お腹が空いた……」

昼も時間がなく、カフェでパンを一つ食べただけで、それ以降何も食べていない。
寝不足が重なって、コーヒーばかりが増えていた。その寝不足も社長のせいだ。瞼を閉じると、社長が上から熱い視線で見つめる顔が浮かび、はっきりしない出来事を再び思い起こさせるからだ。

「ダメだ、寝ちゃう」

パソコンのキーを打つ手が止まり、目が閉じてしまう。こんなことは今までになくて、どうしても眠気を追い出せない。一体、どうしたというのだろう。生理の時だって食欲は増すけど、眠気はない。ミントのタブレットを食べて氷水を飲んでも、眠気が覚めるのは一瞬で、すぐに瞼が閉じ始める。

「やばい、本当にやばい」

一旦、席から立って誰もいなくなった役員フロアを歩く。
少しして席に戻り、書類に目を通していたが、何度も意識を飛ばしてしまった。
しかし散歩くらいでは、眠気は退治出来なかった。

「い……た……」

寝違えでもしたように首が痛い。首を起こそうにも腕がしびれて、どうにもならない。

「いたたた……」

痺れの原因だった首を少し持ち上げ、腕の回復をフリーズして待っていると、目を閉じたままの私に、恋しいような、懐かしいような香りが鼻をかすめた。
どこかで嗅いだことがある香り。そうか、社長がつけている香水と同じだ。とうとう夢に匂いまで、感じるようになってしまったらしい。特殊な能力まで備わってしまって、ますます嫁にいけなくなるじゃないか。
ああ、でも社長に抱かれているみたいで、なんていい気分なの?
背中全体に感じる温かなもの。一体なに? 動けるようになった身体を起こして、背中にかかっているものを掴むと、手触りのいいジャケット。ジャケット?

「……ん?」

はっきりしない頭で判断できず、暫く眺めていた。

「起きたか?」

一瞬で状況が分かった。怖い、恐怖映画の様だ。声のする方を見たら呪われるかもしれない。ばか、そんなことを言っている場合じゃない。

「おはよう」
「申し訳ございません!!」

勢いよく立ち上がり、何度も頭を下げる。起きがけにぶんぶんと頭を振ったせいで立ちくらみを起こす。

「あ……」
「大丈夫か?」

ふらりと倒れそうになった私の身体を、支えてくれる社長。

「急に立ち上がるからだ」

頭は真っ白、何も言えない。

「コーヒーでも飲むか?」
「……滅相もございません……」