【コミカライズ化!7月28日配信!】5時からヒロイン

息苦しくて、胸が締め付けられるような週末は初めてだった。
呪ってやるとか、冗談ぽく言っていたけどダメージは相当だった。鳴らない電話、こないメッセージを何度も確認してしまう。
一人では抱えきれずに、弥生に電話をかけた。

「ごめん、こんな遅くに」
『いいよ、週末だしね。どうしたの? 声が暗いけど?』
「うん……今日ね、会社の園遊会だったんだけど、社長の見合い相手が来て、一緒に帰ったの」
『なに、その三文小説みたいな内容』
「うん」

弥生の言う通りだ。御曹司が彼氏で見合い話、嫉妬からいじめられるというのは、定番。

『御曹司と恋人になる、見合い相手が出現。ハッピーエンドかアンハッピーエンドかの二択。ていうところじゃないの?』
「その通りだし、なによりショックだったのは、見合いのことを知らなかったことなのよ~」
『言うわけないじゃないよ』
「どうしてよ」
『初めから沙耶をとるつもりなら、『見合いをしなくてはならなくなった、断るつもりだから安心しなさい』または、初めから断る。それなのに、接待の場に同席させて、そのうえ二次会まで連れて行くんだよ? 言うわけないじゃん』
「う……」
『心配してた通りになった』
「うわ~ん、別れたくないよ~」

いい年して泣きまねをしてみたけど、どうにもならない。

『二人が決めることだから、口出しはしないけど、社会的地位のある人は、恋だの愛だのでは結婚できないということよ』
「くそう~釜ゆでの刑にしてやる」
『やれやれ』

弥生に話をしたら少しはスッキリするかと思ったけど、全然そんなことはなかった。不安は募るばかりで、弥生の口ぶりからして、別れも近そう。

「フラれるのは自分のプライドが許さない」

今までだってフラれたことはあるけど、今度ばかりはフラれてなるものか。別れるときは振り乱したりしないようにと思っていたけど、それは「もしもそんなことが起こったら」というありえない設定だった。ありえないと思っていたけど、現実は違った。

「愛が憎しみに変わる時なんてタイトルの小説でも書いてみようかな?」

こんな呑気なことを言っている私は、やっぱり能天気なのかも。
それについこの間「玉の輿課」の名を汚さずに済むかも、結婚が現実になるかもなんて公言して、能天気どころかバカで恥の上乗せじゃないか。穴があったら入りたい気分。

「なんで私が、引け目を感じなくちゃいけないのよ」

音沙汰のない電話は、私を「つなぎ」と言っているかのよう。
泣きたい気分だけど、涙はでない。それは何故なのだろうか。