最後の出演者が終わり、いよいよ賞の発表となった。一応出演者全員にわたるように賞品は用意されているけど、やっぱり狙うのは役員賞。どんな賞品が出されているのか察しがついているせいか、出演者は祈るようにして発表を待っている。
そんな時、社長が振り向いて私に合図を送った。指をくいっと曲げて呼ぶ仕草のカッコいいことといったらない。憎たらしいのにぼーっとしてしまう私は、まぬけそのものだ。
「何かしら」
「面倒なことですよ、きっと」
急いで行くと面倒なことよりも、頭に来ることを言われてしまった。
「場所を移すことにした。宿泊先のホテルでセッティングを頼む」
「こちらにいらっしゃる方……皆さんですか?」
「そうだ」
隣で相槌を打ちながら私と社長のやり取りを聞いている令嬢。すでに伴侶の雰囲気を醸し出して当然のような顔をしている。怒りがこみあげて、頭から湯気が出そうだけど、冷静さを失ったら負けだ。
見合い相手だとは知らないと思っているらしい社長は、堂々と恋人兼秘書の私にそんなことを頼む。
丑三つ時に五寸釘でも打ってやろうか。
「畏まりました。すぐに手配をいたします。移動のお車はいかがいたしますか? 」
「私は自分の車で移動をする、ゲストの分だけ手配を」
「畏まりました」
ふん、令嬢は社長の車の助手席ね。そこは私の席だったはずで、譲った覚えもないし、それに社長の平然とした顔。いつもと変わらないのはなんで? 私に対して後ろめたいとか申し訳ないという感情はないのだろうか。そうだとしたら、本当に冷血人間だ。
「どこでも行ってしまえ」
やさぐれたい気持ちを抑えるなんて、私はできた女だ。そんな女を捨てるなんて五代真弥、後悔するぞ。
「並木さん、手伝ってくれる? 社長一行は移動よ」
「もっと早く移動してくれればよかったのに。そう思いません?」
「その通り。早く済ませて、ご飯をたべましょうよ」
「そうですね」
車の手配を並木さんと手分けして済ませ、正面玄関にゲストを案内する。その中に令嬢もいる。すでに仲間に溶け込んで発音のいい英語で会話をしていた。
「部外者なのに、私たちよりフレンドリーってどういうことですか?」
「並木さん、抑えるのよ。仕返しは必ずしてやるわ」
「お願いします」
親ガモのように後ろに連れしたがって歩くけど、裏声で上品ぶって話す令嬢の声しか聞こえず、イライラは頂点に達する。車に乗るときに足でもひっかけてやろうか。
正面玄関にはすでに社長の車も横づけされていて、車から降りて私たちと一緒にゲストをエスコートした。
「こちらへお乗りください」
「はい……ありがとうございます」
はっ! やっぱり、令嬢は社長の車に乗った。ちゃんとドアを開けてエスコートをして、静かにドアを閉める。その窓から、首をほんの少しかしげて頭を下げる。
爆発しそうなこの感情をこらえるのに、握りこぶしをつくってこらえた。
「二人とも、ご苦労だった。残り少ない時間だが、秘書課で楽しんで帰りなさい」
「お気遣いありがとうございます。いってらっしゃいませ」
社長が車に乗り込むとき、私と視線を交差させたけど、私が向けた視線の意味を社長は理解したのだろうか。強く怒りのこもった視線を。その視線を受けながら躊躇うことなく車を走らせていく男。
飽きられたらどうしようかと悩んでいたけど、飽きる前に使い捨てだったなんて予想外のことだった。なんて悲しい言葉なんだろう。
「さ、宴会よ、宴会!」
「部長と神原さんが料理を確保してくれていたんですよ!」
「ほんと!?」
「ご飯のことは抜かりがない部長がいてよかったですね」
「食いしん坊はこういう時に役に立つのよね、早く行きましょう」
「はい!」
涙がでそうだった。明るく振舞っていないと溢れ出そうだった。
そんな時、社長が振り向いて私に合図を送った。指をくいっと曲げて呼ぶ仕草のカッコいいことといったらない。憎たらしいのにぼーっとしてしまう私は、まぬけそのものだ。
「何かしら」
「面倒なことですよ、きっと」
急いで行くと面倒なことよりも、頭に来ることを言われてしまった。
「場所を移すことにした。宿泊先のホテルでセッティングを頼む」
「こちらにいらっしゃる方……皆さんですか?」
「そうだ」
隣で相槌を打ちながら私と社長のやり取りを聞いている令嬢。すでに伴侶の雰囲気を醸し出して当然のような顔をしている。怒りがこみあげて、頭から湯気が出そうだけど、冷静さを失ったら負けだ。
見合い相手だとは知らないと思っているらしい社長は、堂々と恋人兼秘書の私にそんなことを頼む。
丑三つ時に五寸釘でも打ってやろうか。
「畏まりました。すぐに手配をいたします。移動のお車はいかがいたしますか? 」
「私は自分の車で移動をする、ゲストの分だけ手配を」
「畏まりました」
ふん、令嬢は社長の車の助手席ね。そこは私の席だったはずで、譲った覚えもないし、それに社長の平然とした顔。いつもと変わらないのはなんで? 私に対して後ろめたいとか申し訳ないという感情はないのだろうか。そうだとしたら、本当に冷血人間だ。
「どこでも行ってしまえ」
やさぐれたい気持ちを抑えるなんて、私はできた女だ。そんな女を捨てるなんて五代真弥、後悔するぞ。
「並木さん、手伝ってくれる? 社長一行は移動よ」
「もっと早く移動してくれればよかったのに。そう思いません?」
「その通り。早く済ませて、ご飯をたべましょうよ」
「そうですね」
車の手配を並木さんと手分けして済ませ、正面玄関にゲストを案内する。その中に令嬢もいる。すでに仲間に溶け込んで発音のいい英語で会話をしていた。
「部外者なのに、私たちよりフレンドリーってどういうことですか?」
「並木さん、抑えるのよ。仕返しは必ずしてやるわ」
「お願いします」
親ガモのように後ろに連れしたがって歩くけど、裏声で上品ぶって話す令嬢の声しか聞こえず、イライラは頂点に達する。車に乗るときに足でもひっかけてやろうか。
正面玄関にはすでに社長の車も横づけされていて、車から降りて私たちと一緒にゲストをエスコートした。
「こちらへお乗りください」
「はい……ありがとうございます」
はっ! やっぱり、令嬢は社長の車に乗った。ちゃんとドアを開けてエスコートをして、静かにドアを閉める。その窓から、首をほんの少しかしげて頭を下げる。
爆発しそうなこの感情をこらえるのに、握りこぶしをつくってこらえた。
「二人とも、ご苦労だった。残り少ない時間だが、秘書課で楽しんで帰りなさい」
「お気遣いありがとうございます。いってらっしゃいませ」
社長が車に乗り込むとき、私と視線を交差させたけど、私が向けた視線の意味を社長は理解したのだろうか。強く怒りのこもった視線を。その視線を受けながら躊躇うことなく車を走らせていく男。
飽きられたらどうしようかと悩んでいたけど、飽きる前に使い捨てだったなんて予想外のことだった。なんて悲しい言葉なんだろう。
「さ、宴会よ、宴会!」
「部長と神原さんが料理を確保してくれていたんですよ!」
「ほんと!?」
「ご飯のことは抜かりがない部長がいてよかったですね」
「食いしん坊はこういう時に役に立つのよね、早く行きましょう」
「はい!」
涙がでそうだった。明るく振舞っていないと溢れ出そうだった。



