【コミカライズ化!7月28日配信!】5時からヒロイン

「お待たせしました」
「ありがとうございます」
「ごゆっくり、お楽しみください。社長にもお淹れいたしました」
「ありがとう」

ふん。首なんかかしげてお礼を言ったって、女の私には通用しませんよ。社長だって何もなかったような顔を渡しに向けて、罪悪感は微塵もない。
秘書たちの集まっている所に戻って、役員たちの様子を見ると、軽く小指をたててストローからジュースを飲んでいる令嬢が見える。

「絶対に冷たいはず」
「何かしたんです?」

並木さんがにやりと意地悪そうに笑って聞く。

「オレンジジュースにたっぷりの氷をいれてキンキンにしてあげたの」
「ふふふ、やりましたね」
「やったわ」
「それって、社長に対するやきもちからですか?」

一瞬ドキリとしてしまったけど、そこは否定しなくては。

「違うわよ、秘書道一筋でこの年まで来たのに、一人だけ先に結婚なんて許せないわよ、憎たらしい。自分よりまず私に見合い相手を紹介してくれたらいいのにさ、それにあのワンピース。あのブランドのやつよ。この肌寒さにシルクのワンピースをひらひらさせて着ちゃって」

服のことは後付け、結婚のことは本心だ。
この見合いが会社にとって有益で、利害関係がお互いに一致していれば、本人の感情は関係なく結婚へと向かうだろう。
やっとできた彼氏は社長で、すこし浮かれていた私に対して、現実を見なさいという神様からのお告げなのか。

「私も思ってました。でも、水越さん優しいですよ。私ならわざと転んでジュースをぶっかけてます」
「やるわね」
「見てくださいよ、手をこすって寒そうにしてる」

令嬢と社長を見ると、並木さんのいうように寒そうに手をこすってる。思わず笑いが出てしまうあたり、本当に意地が悪い。

「もっと寒くなあれ、もっと寒くなあれ」
「水越さん、呪文をかけてますね、笑える」

お腹がすいて、怒りも加われば呪いたくなるのも当然だ。念を送るように、もう一度言ってやる。
でも、ほっとした。嫉妬をあらわにしてしまってまずいと思ったけど、とっさの言い訳も怪しまれなかったし、それと私より意地悪なことを思っていたなんて。上には上がいるものね。並木さんの先輩でよかった。後輩だったら、何をされていたかと思うと、恐怖で身震いをしてしまう。でも今の私は、並木さん以上の意地悪さが出ているわね。
女の敵は女。
令嬢が悪いわけじゃないけど、憎しみは社長より令嬢に向かう。時代が移り変わっても、変わらない女の性だと思う。

「どうでもいいけど、終わらないんだけど。いつになったらご飯を食べられるのかしらね」
「お腹がすきすぎて身体も温まらないし、散々ですね」
「早く帰れ」
「ブラックな水越さん、最高です」

社員の出し物は終盤を迎え、盛り上がりは最高潮になった。最初は緊張していた出演者も、場に慣れてきたのか、コールまで飛び出していた。
ゲストは社員たちよりもはしゃいでいて、そこはさすが陽気なアメリカ人。盛り上げるのがうまい。

「やっと発表になりましたよ。もう少しですね」
「そうね」