「お待たせしました」
「ありがとうございます」
「ごゆっくり、お楽しみください。社長にもお淹れいたしました」
「ありがとう」
ふん。首なんかかしげてお礼を言ったって、女の私には通用しませんよ。社長だって何もなかったような顔を渡しに向けて、罪悪感は微塵もない。
秘書たちの集まっている所に戻って、役員たちの様子を見ると、軽く小指をたててストローからジュースを飲んでいる令嬢が見える。
「絶対に冷たいはず」
「何かしたんです?」
並木さんがにやりと意地悪そうに笑って聞く。
「オレンジジュースにたっぷりの氷をいれてキンキンにしてあげたの」
「ふふふ、やりましたね」
「やったわ」
「それって、社長に対するやきもちからですか?」
一瞬ドキリとしてしまったけど、そこは否定しなくては。
「違うわよ、秘書道一筋でこの年まで来たのに、一人だけ先に結婚なんて許せないわよ、憎たらしい。自分よりまず私に見合い相手を紹介してくれたらいいのにさ、それにあのワンピース。あのブランドのやつよ。この肌寒さにシルクのワンピースをひらひらさせて着ちゃって」
服のことは後付け、結婚のことは本心だ。
この見合いが会社にとって有益で、利害関係がお互いに一致していれば、本人の感情は関係なく結婚へと向かうだろう。
やっとできた彼氏は社長で、すこし浮かれていた私に対して、現実を見なさいという神様からのお告げなのか。
「私も思ってました。でも、水越さん優しいですよ。私ならわざと転んでジュースをぶっかけてます」
「やるわね」
「見てくださいよ、手をこすって寒そうにしてる」
令嬢と社長を見ると、並木さんのいうように寒そうに手をこすってる。思わず笑いが出てしまうあたり、本当に意地が悪い。
「もっと寒くなあれ、もっと寒くなあれ」
「水越さん、呪文をかけてますね、笑える」
お腹がすいて、怒りも加われば呪いたくなるのも当然だ。念を送るように、もう一度言ってやる。
でも、ほっとした。嫉妬をあらわにしてしまってまずいと思ったけど、とっさの言い訳も怪しまれなかったし、それと私より意地悪なことを思っていたなんて。上には上がいるものね。並木さんの先輩でよかった。後輩だったら、何をされていたかと思うと、恐怖で身震いをしてしまう。でも今の私は、並木さん以上の意地悪さが出ているわね。
女の敵は女。
令嬢が悪いわけじゃないけど、憎しみは社長より令嬢に向かう。時代が移り変わっても、変わらない女の性だと思う。
「どうでもいいけど、終わらないんだけど。いつになったらご飯を食べられるのかしらね」
「お腹がすきすぎて身体も温まらないし、散々ですね」
「早く帰れ」
「ブラックな水越さん、最高です」
社員の出し物は終盤を迎え、盛り上がりは最高潮になった。最初は緊張していた出演者も、場に慣れてきたのか、コールまで飛び出していた。
ゲストは社員たちよりもはしゃいでいて、そこはさすが陽気なアメリカ人。盛り上げるのがうまい。
「やっと発表になりましたよ。もう少しですね」
「そうね」
「ありがとうございます」
「ごゆっくり、お楽しみください。社長にもお淹れいたしました」
「ありがとう」
ふん。首なんかかしげてお礼を言ったって、女の私には通用しませんよ。社長だって何もなかったような顔を渡しに向けて、罪悪感は微塵もない。
秘書たちの集まっている所に戻って、役員たちの様子を見ると、軽く小指をたててストローからジュースを飲んでいる令嬢が見える。
「絶対に冷たいはず」
「何かしたんです?」
並木さんがにやりと意地悪そうに笑って聞く。
「オレンジジュースにたっぷりの氷をいれてキンキンにしてあげたの」
「ふふふ、やりましたね」
「やったわ」
「それって、社長に対するやきもちからですか?」
一瞬ドキリとしてしまったけど、そこは否定しなくては。
「違うわよ、秘書道一筋でこの年まで来たのに、一人だけ先に結婚なんて許せないわよ、憎たらしい。自分よりまず私に見合い相手を紹介してくれたらいいのにさ、それにあのワンピース。あのブランドのやつよ。この肌寒さにシルクのワンピースをひらひらさせて着ちゃって」
服のことは後付け、結婚のことは本心だ。
この見合いが会社にとって有益で、利害関係がお互いに一致していれば、本人の感情は関係なく結婚へと向かうだろう。
やっとできた彼氏は社長で、すこし浮かれていた私に対して、現実を見なさいという神様からのお告げなのか。
「私も思ってました。でも、水越さん優しいですよ。私ならわざと転んでジュースをぶっかけてます」
「やるわね」
「見てくださいよ、手をこすって寒そうにしてる」
令嬢と社長を見ると、並木さんのいうように寒そうに手をこすってる。思わず笑いが出てしまうあたり、本当に意地が悪い。
「もっと寒くなあれ、もっと寒くなあれ」
「水越さん、呪文をかけてますね、笑える」
お腹がすいて、怒りも加われば呪いたくなるのも当然だ。念を送るように、もう一度言ってやる。
でも、ほっとした。嫉妬をあらわにしてしまってまずいと思ったけど、とっさの言い訳も怪しまれなかったし、それと私より意地悪なことを思っていたなんて。上には上がいるものね。並木さんの先輩でよかった。後輩だったら、何をされていたかと思うと、恐怖で身震いをしてしまう。でも今の私は、並木さん以上の意地悪さが出ているわね。
女の敵は女。
令嬢が悪いわけじゃないけど、憎しみは社長より令嬢に向かう。時代が移り変わっても、変わらない女の性だと思う。
「どうでもいいけど、終わらないんだけど。いつになったらご飯を食べられるのかしらね」
「お腹がすきすぎて身体も温まらないし、散々ですね」
「早く帰れ」
「ブラックな水越さん、最高です」
社員の出し物は終盤を迎え、盛り上がりは最高潮になった。最初は緊張していた出演者も、場に慣れてきたのか、コールまで飛び出していた。
ゲストは社員たちよりもはしゃいでいて、そこはさすが陽気なアメリカ人。盛り上げるのがうまい。
「やっと発表になりましたよ。もう少しですね」
「そうね」



