【粋な計らい】
影が段々と長くなるこの時間、達也は来た時よりも早く車を走らせた。
道中、左に続く地平線を 見ながら、もう”会うこと”の出来ない麻美をただ想っていた。
若すぎた挫折、
一人にしてほしいと願ったあの一時、反面、
どんなことがあっても、想い続けるという彼女の強さ。
結局、今日(こんにち)まで何も解らなかった達也は、今、本当に
”一人”
になってしまったのだった。
やがて、喫茶店に戻り席についた達也に、”何も”いわなくとも”ブレンドコーヒー”がだされ、ふと見ると、向かいの席には ”紅茶”が、あらかじめ、用意されていた。
それはまさに、あの日、あの時の再現であり、老婆の粋な計らいであった。
カウンターから、マスターがニコニコ達也にこういった。
「どうだったね?わしの最高の”作品”は?」
得意げにいって見せたが、答えをきかずに
「おまえさん、もう判ったかや?」
と、快活な雰囲気で畳み掛けた。
「はいっ。叔父さん、叔母さん、本当にいろいろありがとう。今から麻美に逢いにいって参ります。長い間待たせてますから。」
コーヒーを一口飲んで続ける。
「僕はあの時、一人になりたくて、麻美を残して立ち去りました。でも、一人になったのは…………」
達也は、言葉に詰まり、静かに涙を流した。
「待ってるよ、あの時と同じ気持ちでや、おまえさんがくるのをね。」
老婆は、そう、優しい笑顔で言葉を添えると、泣き崩れた。
だれもが、人の死や
生き様に想い出を重ね
そしてそれらを懐かしみ
美化するものだ。
しかし、決して死とは
懐かしむ事ではなく、
美化するものではない。
そう、死とは
”生きた証”
そのものである。
老夫婦に、深い感謝の意とあいさつをして、達也は麻美のもとへ向かった。
影が段々と長くなるこの時間、達也は来た時よりも早く車を走らせた。
道中、左に続く地平線を 見ながら、もう”会うこと”の出来ない麻美をただ想っていた。
若すぎた挫折、
一人にしてほしいと願ったあの一時、反面、
どんなことがあっても、想い続けるという彼女の強さ。
結局、今日(こんにち)まで何も解らなかった達也は、今、本当に
”一人”
になってしまったのだった。
やがて、喫茶店に戻り席についた達也に、”何も”いわなくとも”ブレンドコーヒー”がだされ、ふと見ると、向かいの席には ”紅茶”が、あらかじめ、用意されていた。
それはまさに、あの日、あの時の再現であり、老婆の粋な計らいであった。
カウンターから、マスターがニコニコ達也にこういった。
「どうだったね?わしの最高の”作品”は?」
得意げにいって見せたが、答えをきかずに
「おまえさん、もう判ったかや?」
と、快活な雰囲気で畳み掛けた。
「はいっ。叔父さん、叔母さん、本当にいろいろありがとう。今から麻美に逢いにいって参ります。長い間待たせてますから。」
コーヒーを一口飲んで続ける。
「僕はあの時、一人になりたくて、麻美を残して立ち去りました。でも、一人になったのは…………」
達也は、言葉に詰まり、静かに涙を流した。
「待ってるよ、あの時と同じ気持ちでや、おまえさんがくるのをね。」
老婆は、そう、優しい笑顔で言葉を添えると、泣き崩れた。
だれもが、人の死や
生き様に想い出を重ね
そしてそれらを懐かしみ
美化するものだ。
しかし、決して死とは
懐かしむ事ではなく、
美化するものではない。
そう、死とは
”生きた証”
そのものである。
老夫婦に、深い感謝の意とあいさつをして、達也は麻美のもとへ向かった。


