【あかねいろ】 Endless_eternal_Lovers(短編集①)

【三日月】
一人になった達也は、老夫婦から渡された麻美の手紙を、無意識に鞄からだした。表面には一言
”たつやへ”
と、だけあり、どの文字も、震えて書いたように波打っていた。
それは紛れも無く、病床の麻美の容態を表すものだった。

一人薄暗いホームのベンチに座り、三日月の綺麗な夜空に、麻美を浮かべようとした。

だがそこには、冬のすんだ空に輝く、無数の星しか見えなかった。

しばらくすると、遠くから線路を伝う微かな音が段々とはやく、大きくなりだし、最終列車を知らせる掲示板にあかりが灯った。

達也は、重い腰を上げ後ろを向き、もう間もなくくるであろう、この町への別れを告げるかのように、ゆっくりと見渡した。

街頭ひとつもない真っ暗 な町並み、二人で住むはずだったこの町、冷たい風に後押しされ、達也の 頬に静かに落ちる涙。

ブーーー ブーーー

静まり返っている達也の視野の先、明らかに線路から続く機械音とは違う”その”音と、段々と大きくなる”ふたつ”の光が、電車とより早いスピードで入ってきた。
車である。

やがて、先についたその車から、マスターが達也の元へ駆け寄った。