【最期の願い】
「ところが、容態が急に悪化してね、私たち家族もある程度の覚悟を決めたときに、あーちゃんから三つ頼まれたんだ」
由美姉は、一幕あけるように、鞄からタバコを取り出し、火を点けた。
一つは達也に手紙を書く事、そして二つ目は、今年のあの日に、ワンピースをきて 代わりにここにくることだった。
三つ目、由美姉は”あえて”伝えることはしなかった。
気持ちも安らかになり、しばらくアルバムを見たり、想い出話をしていた由美姉と達也、奥から老夫婦が、テーブルにメニューにない料理を運んだ。老夫婦の計らいで、 夕食を用意していたのだ。
しばし、談笑や老夫婦の 惚気話などをしていたが、突然何かに気づいたか、マスターが、
「あっ、今日は………そうか!……だからお姉さんここに……」
「……はい。」
それは主語のない、短いやり取りであった。
やがて夜も深まり、老夫婦からは泊まっていくよう二人に気遣いをしたが、二人は最終があるからと挨拶を深くして、少し歩く駅に向かった。
単線で、それぞれ違う方向の最終電車を待つ二人。
由美姉から達也に 一枚の薄い手紙が渡された。
しばらくして、東京方面に帰る、由美姉の電車が先に来た。
「たっちゃん、元気で………元気でね」
そう、一言伝えると由美姉は、閉まったドアの小窓から、麻美が別れ際にいつも見せたような、少し寂しげな精一杯の笑顔で手を振った。
由美姉をのせた列車は瞬く間に、厳冬の暗闇に小さく小さく消えていった。
「ところが、容態が急に悪化してね、私たち家族もある程度の覚悟を決めたときに、あーちゃんから三つ頼まれたんだ」
由美姉は、一幕あけるように、鞄からタバコを取り出し、火を点けた。
一つは達也に手紙を書く事、そして二つ目は、今年のあの日に、ワンピースをきて 代わりにここにくることだった。
三つ目、由美姉は”あえて”伝えることはしなかった。
気持ちも安らかになり、しばらくアルバムを見たり、想い出話をしていた由美姉と達也、奥から老夫婦が、テーブルにメニューにない料理を運んだ。老夫婦の計らいで、 夕食を用意していたのだ。
しばし、談笑や老夫婦の 惚気話などをしていたが、突然何かに気づいたか、マスターが、
「あっ、今日は………そうか!……だからお姉さんここに……」
「……はい。」
それは主語のない、短いやり取りであった。
やがて夜も深まり、老夫婦からは泊まっていくよう二人に気遣いをしたが、二人は最終があるからと挨拶を深くして、少し歩く駅に向かった。
単線で、それぞれ違う方向の最終電車を待つ二人。
由美姉から達也に 一枚の薄い手紙が渡された。
しばらくして、東京方面に帰る、由美姉の電車が先に来た。
「たっちゃん、元気で………元気でね」
そう、一言伝えると由美姉は、閉まったドアの小窓から、麻美が別れ際にいつも見せたような、少し寂しげな精一杯の笑顔で手を振った。
由美姉をのせた列車は瞬く間に、厳冬の暗闇に小さく小さく消えていった。


