【あかねいろ】 Endless_eternal_Lovers(短編集①)

【紅茶】
由美姉は、差し出された紅茶を、気持ちを落ち着かせるようにゆっくり味わうと、

「おいしい……」

と朗らかな笑みを見せ、落ち着いた声で、達也に 話しはじめた。

「たっちゃん、あのね、あーちゃんはね、去年の春、骨髄性白血病をわずらってね。今は……安らかに眠ってるわ……。
あなたがいなくなったあの日ね、あの子は夜な夜な自分を責めたててね、ずっと、たっちゃんの名前を呼び続けてた。
幾日も幾日も、それが続いてね、揚げ句の果てに身体を壊してね
それから……誰とも口を聞かなくなったの。」

由美姉は、気持ちを押さえるように、再び紅茶を口に運んだ。

「あるときね、突然”紅茶”が飲みたいって言い出してね、すぐに病院にお願いして朝食にだしてもらったんだ。
その時は、なんでかわからなかったけど、紅茶だけを欲しがってね。で、7月のおわりにね、急に一日外出したいって言い出してね、それも8月3日にって。
先生から外出許可が条件付きで出てね、その際に私が頼まれたのは、青いワンピースと白いむぎわら帽子を持ってきてということだった。」

老婆もマスターも 黙って聞いた。

「わたしはね、先生からの外出の条件である、引率をしようとしたんだけど、麻美がどうしても一人にしてほしい、心配ないからってね、強く願ったの。
その熱意に負けてね、ただ、外出の際に麻美の後をつけていったんだ。
そしたらここにたどり着いてね。窓越しに見た 麻美は、紅茶をおいしそうに飲んでいたわ、しばらく見ることのなかった 笑顔でね。それ以降、以前の麻美にすぐにもどってね、普通の生活にもどったのよ」