ただひとつこの恋に誤算があるとすれば、互いに引き返せない道を、出逢った頃には歩んでしまっていたことでしょう。
私たちは出逢うには遅すぎ、離れるには早すぎる時間を過ごしてしまったのです。


明日、私は幼き頃からの許嫁と婚礼の式を上げます。貴方がちょうど、ご両親の決めた方とお見合いをする頃です。
己の人生に我儘を言うつもりはありません。素敵な方ですからきっと、きっと幸せになれると思うのです。
紅差し指で色付けた唇は、もう二度と貴方がくれた口紅の色には染まらないでしょう。
どうかそれで良かったと笑って下さい。今流した涙を、後悔などしたくないのです。