ひと夏の、

こうして、映画の終わりと共に、私たちのエンドロールも始まった。
私は流れるピアノの音を聴きながら、目蓋を閉じる。
楽しかったこと、悲しかったこと、嬉しかったこと、悔しかったこと、──映画みたいな恋だった。
映画みたいに、幸せな恋だった。

「私、あなたがエンドロールを最後まで見るような人だったから好きだった」

エンドロールが、もうすぐ終わる。
私たちの、恋が終わる。

「後悔してない?」

「してない」

彼はあの頃と同じように、俺もだよ、とはっきり言った。私は目蓋を開ける。


もう、お互いに言葉はなかった。
町の小さな映画館の最後のエンドロールを、私たちは並んで見届けた。
星明かりが道を照らす夜だった。


end.