ひと夏の、

お互いに映画が好きで、デートの待ち合わせは町の小さな映画館の前。
彼とならどんなにつまらない映画でも、幸せだと思えた。
エンドロールが物語よりも特別なもののように思えた。
二つ年上のその人を、誰よりも愛おしいと思ったし、彼が好いてくれている自分を大事にしたいと思えた。


でも、付き合って3年が経った頃、くだらない喧嘩をすることが増えるようになった。
2人ともが社会人になって、忙しさに揉まれる中で、余裕が持てなくなってしまった。


その頃からきっと、同じことを考えていたのだと思う。それでも一緒にいたかったから、気付かないふりをした。繰り返される日々に縋っていれば、いつか元通りになると信じていた。