ひと夏の、

その人は、きっかり3回目のデートで私のことが好きだと告白した。
付き合ってから3回目のデートでキスをし、5回目のデートで壊れ物に触れるかのように、私に手を伸ばした。
星明かりの中、私はその人に尋ねた。

「私なんかの、どこがよかったの?好きだって言ったこと、後悔してませんか」

してない、とその人ははっきり言った。

「あなたは、エンドロールを最後まで見るような人だから。だから後悔はしない」

重ねられた唇が少しだけ震えていたのは、私が震えていたのか、彼が震えていたのか。
今となっては聞けないけれど、ひとつも怖くはなかった。


私はその人の優しい手を、その夜一度も拒まなかった。