ひと夏の、

「彼方、いい加減泣きやみなよ」

「だって、涙が止まらない」

「じゃあ座って宿題のことだけ考えたらいい。そうしたら宿題も終わって一石二鳥じゃない」

「……」

「今年は宿題手伝わないよ」

ぴくり、と彼方の指が反応する。
文句を言うかと思えば、彼方はぐっと堪えるように黙りこくり、暫くしてから口を開いた。

「……こなっちゃんには分からないよ」

彼方はうつ伏せにしていた体を転がし、私に背を向ける。
私は足先の爪をターコイズブルーに染めていた手を止め、その背中を見た。