彼方は毎年失恋した。
毎年大粒の涙を流し、そして毎年新しい恋をした。


私は彼方の叔母さんと私の叔父さんが経営する海の家で、その一世一代の大失恋とやらを聞かされ、わんわんと泣く彼方を宥め慰めるのが役目だった。


そんなに泣くなら、恋なんて辞めればいいと思う。いつかそう言ったら、彼方はそうする、と言って鼻を啜った。もう何年も前の話だ。
結局、それが守られたことはないけれど。
性懲りも無く、彼方は恋に生きる人生を続けていた。