「これはもう失恋ですよ、ブロークンハート。絶対絶対ぜぇーったい立ち直れない」


何回聞いたか分からない台詞が、私の夏を連れてくる。

「夏休みの宿題終わんなくて進級できない方が、ずっと立ち直れないと思うけど」

「分かってるよ。でもさぁ、失恋ってもう生きていけないってくらい、ほんとに痛いんだ」

ぐずぐずと力なく床に突っ伏して、彼方は心の痛みを訴えた。
彼方の周りには筆記用具と書きかけの読書感想文が散らばっていて、今にも扇風機の風に飛ばされてしまいそうだ。
私は原稿用紙の上にそっと筆箱を移動させると、半分だけ彩られた足の爪に視線を戻し、右手の中指で髪を耳にかけた。