「もうね、お前のそれは料理に対する冒涜だよ。なんだよこの卵。もう乾涸びたミミズみたいになってんじゃん」

あぁくそ農家の人に申し訳が立たない、なんて言いいながら、結局全部口の中に放り込んでいくこの人を、困らせてしまう私は結構性格が悪いと思う。


この人が困っているうちは、私のことを見てくれる。
私がしたことを、口にした言葉を、なかったことにはされないんだと、安心できた。


だから味をしめた盗人のように、私は突拍子もないことをしては、この人を度々困らせた。


この人の優しさに付け込んだ。


「ミミズだって、肥料になるいいヤツだよ」

「用途が違ぇんだわ。俺一応人間だし。……俺これ全部食うから、お前は先に洗い物してて」

「分かった。洗剤ってこれ?」

「そ……れはドレッシング!なんでだよ書いてあるだろ!もういいお前は何も触んな。座ってテレビでも見てろ」


私を押し退けて、遼介くんが台所に立つ。
私はくふくふ笑いながらすぐ後ろのダイニングチェアに腰を下ろし、三角座りをしてその広い背中を眺めた。