それから彼とは適当な会話をして、別れた。

「じゃあ、また明日。」
と言った僕に消えそうな笑みを浮かべ、彼が言う。

「明日が来るのかも分からないし、君とだって会えるか分からないから怖いな。なんだか、約束をするみたいで。」

その言葉で思い出した。彼は確か、中身のない約束が嫌いだ。慌てて謝る。
「あぁ、ごめん。そういえばそう言うの嫌いだったね。」

「嫌いなわけじゃないさ。守れるか分からない根拠のない約束が苦手なだけ。」
屋上のフェンスに背を向けた彼の表情は夕日のせいでよく見えない。

「さっきも言ったけど、明日君も俺も生きてる保証なんかないからさ。」
彼が、少しくぐもった声で告げる。風に吹かれて、飛んでしまいそうに見えた。