彼はいつも通りの感情の読めない笑みとも言えない、ふにゃぁとした顔で言った。そんな彼に笑みを向ける。できるだけ嘘だとバレないように努めて、慎重に。
「ははっ、そんなわけないよ。僕はそこまで冷たい人間になったつもりはないよ。」
「別に冷たい人間だとか思ったことないし、言ってもない。」

少し、間を置いて軽く息を吸い込んで吐き出す。ただ呼吸をしただけなのだと、思う。
「仮に君が冷たい人間だとしても嫌うことは無いから安心して。人には色々な側面があるものだと思ってるから。」

彼のその言葉にホッとした自分がいたことは嘘ではないだろう。僕は、人からの好意は基本的に嘘を通さずに受け取るのだ。

まぁ、今の言葉が好意なのかは知らないけれど。そう受け取っておくことにする。