定期の王子様

……いやいやいや、それはないって。

「なに、急に黙って。
もしかして、俺に惚れた?」

にやり、あいつの頬が歪んでかっと顔が熱くなる。

「ないから!
絶対ないから!
確かに、性格悪いとか思ってたのは考え直したけど!
ないから!
私が好きなのは定期の王子様だし!」

「は?
定期の王子?」

一瞬、きょとんとしたあいつに腹が立って、さらに続ける。

「私の理想は、前に定期を拾ってくれた王子様なんだから!」

びっしと人差し指を突きつけて私が言い切り、あいつは次の瞬間すごい勢いで笑いだした。

「なにそれ!
王子?
いつの間に俺、王子になったの!?」

「おかしくない!
だって王子様みたいにかっこよかったんだから!」

笑い続けるあいつに一気にまくし立てて、おかしなことに気がついた。

……ん?
俺が王子になったって?

「あー、もー、おまえ、サイコー。
それ、俺だけど?」

「は?
なに言ってんの?
あんたなんかよりずーっと……」

……あれ?
帽子なしで見たら、ちょっと似てる?
でも、眼鏡が似てるからじゃないかな。
それに、髪型違うし。

「だから。
それ、俺だって」