定期の王子様

日がたつにつれて想像は膨らんでいき、どんどん自分の理想になっていく。
そうなるとやはり、もう一度会いたい。
そうは思うものの、定期の王子様にはなかなか再会できなかった。
もしかしてあの日は、たまたまあの駅にいただけとか?
もう二度と会えないのかもしれないと諦めてかけていたんだけど。

 
その日、朝のバスでなんとなく違和感。
私が毎朝乗るバスはぎゅうぎゅうとまではいかなくても、そこそこ混んでる。
立っていると隣の人と身体がふれる、なんて普通。
だから最初はたまたまだって思っていた。

……だけど。

少しだけ、身体の角度を変えたってついてくる。

……え?
なに?

戸惑う私を無視するように、それはごそごそと動いている。

……やだ。
気持ち悪い。

痴漢にあったけどなにもできなくて泣いてるクラスメイトを見たとき、私だったら思いっきり手を掴んで大声上げてやるのに、ってどこか莫迦にしていた。
けれど、現実は違っていた。
怖くて、声すら出ない。
がたがたと身体が震える。
少しでも逃げたくて、降りる人にあわせてさりげなく運転席の後ろまで移動した。